ギターのオイルフィニッシュとは?|なぜ私はオイルフィニッシュを選ぶのか
2026年8月8日
オイルフィニッシュとは?
ギターの仕上げには、ラッカーやウレタンなど、さまざまな方法があります。
その中で、私がギター製作に取り入れているのがオイルフィニッシュです。
オイルフィニッシュは、木材の表面を厚い塗膜で覆うのではなく、木材にオイルを浸透させ、成分を木材内部で硬化させることで木材を保護する仕上げ方法です。
木材そのものの質感を楽しみながら、必要な保護性能を確保できる。
それがオイルフィニッシュの大きな特徴です。
オイルフィニッシュの基本
オイルフィニッシュについて、まず押さえておきたいことがあります。
① 乾性油であること
オイルフィニッシュに使用するオイルは、基本的に乾性油である必要があります。
乾性油とは、空気中の酸素と反応して硬化する性質を持つ油です。
ただ単に「オイル」と呼ばれているものなら、何でも木材の仕上げに使えるというわけではありません。
② 乾性油であれば、選択肢はある
乾性油にはさまざまな種類があります。
そのため、「オイルフィニッシュにはこのオイルしか使えない」というものではありません。
使用する製品によって、仕上がりや施工性などが変わります。
実際に使用する場合は、それぞれの製品の性質やメーカーの説明を確認することが重要です。
③ 木材内部で成分が硬化する
オイルを木材に塗り込むと、オイルの成分が木材に浸透します。
その後、空気中の酸素と反応して硬化することで、木材を保護します。
これによって、湿気や汚れなどが木材へ入り込むことを抑えます。
④ 基本的に厚い塗膜を作らない
ラッカーやウレタンなどの一般的な塗装では、木材表面に塗膜を形成します。
一方、オイルフィニッシュは基本的に厚い塗膜を作りません。
そのため、木材の手触りや表情を直接感じることができます。
オイルフィニッシュのメリット
① 製作費を抑えられる
オイルフィニッシュは、ラッカーやウレタンなどと比較して、塗装工程をシンプルにできます。
塗装設備や材料、研磨などに必要な工程を合理化できるため、結果としてギターの製作費を抑えることができます。
これは製作者側だけのメリットではありません。
製作費を抑えることができれば、完成したギターの価格にも反映できます。
② 製作期間を短縮できる
塗膜を何度も形成し、乾燥させ、研磨して、さらに塗装する。
そうした工程を必要としないため、製作期間を短縮できます。
ギターを作る上で、塗装は非常に大きな工程です。
そこを合理化できることは、オイルフィニッシュを選ぶ大きな理由の一つです。
③ 塗膜による音質への影響を考えなくてよい
オイルフィニッシュでは、基本的に厚い塗膜を形成しません。
そのため、塗膜によって木材表面を覆うことによる影響を考える必要が少なくなります。
「オイルフィニッシュだから音が良くなる」という単純な話ではありません。
むしろ、木材に必要以上のものを加えず、できるだけそのまま活かすという考え方です。
④ 木材の質感を楽しめる
これはオイルフィニッシュの大きな魅力です。
木材の木目、導管、杢などをそのまま見ることができます。
そして、実際に手で触れたときにも、厚い塗膜越しではない木材そのものに近い質感を感じることができます。
ギターは木材から作られています。
その木材を隠すのではなく、できるだけその表情を残したい。
それがオイルフィニッシュを選ぶ理由の一つです。
オイルフィニッシュのデメリット
① 塗りつぶしには向かない
オイルフィニッシュの大きな制約は、木材を完全に隠すような塗りつぶし仕上げには向かないことです。
ただし、着色そのものができないわけではありません。
ステインによる染色や着色、カラーオイルによる着色など、木材の表情を残しながら色を付ける方法はあります。
着色後にオイルを施工することも可能です。
具体的な施工方法については、次の記事で詳しく説明します。
オイルフィニッシュについてよくある誤解
「オイルフィニッシュは傷つきやすい?」
塗膜がないため、木材そのものに傷がつけば、その傷は木材の傷になります。
しかし、オイルフィニッシュだから簡単に傷だらけになるというわけではありません。
実際に木材へ直接傷をつけるには、それなりの衝撃や、硬いものによる引っかき傷などが必要です。
また、傷がついた場合でも、表面を整えて再度オイルを施工するという修繕がしやすいことも、オイルフィニッシュのメリットです。
「オイルフィニッシュは湿気に弱い?」
木材は、どのような仕上げであっても湿度の影響を受けます。
オイルフィニッシュだから湿気の影響を完全に受けなくなるわけでも、逆に極端に弱くなるわけでもありません。
少なくとも、一般的なソリッドボディのエレキギターにおいて、オイルフィニッシュだから湿気による音の変化が特に気になる、というものではありません。
なぜ私はオイルフィニッシュにこだわるのか?
私がオイルフィニッシュを選ぶ理由は、単に「安く作れるから」ではありません。
① ラッカーやウレタンの質感に飽きた
長くギター製作をしていると、ラッカーやウレタンによる仕上げとは違うものを作りたくなることがあります。
木材そのものの手触りや表情を、もっと前面に出したかった。
それが一つのきっかけでした。
② 塗りつぶすより、木材の表情を見たかった
ギターに使われる木材には、それぞれ違った表情があります。
木目や導管、杢などを塗膜で覆い隠してしまうより、そのまま見せたい。
そう考えるようになりました。
③ 工程を減らし、製作費を抑えたい
工程が少なくなれば、製作期間も短くなります。
製作期間が短くなれば、製作費も抑えることができます。
結果として、より手の届きやすい価格でギターを提供できます。
これは、私がオイルフィニッシュを選ぶ現実的な理由です。
④ 独自のオイルフィニッシュを試してきた
オイルフィニッシュを実際のギター製作に取り入れる中で、どのように研磨し、どのようにオイルを入れ、どのように仕上げればよいのかを試してきました。
単純に既存の方法をそのまま使うのではなく、自分の製作に合う方法を探してきたことも、現在のオイルフィニッシュにつながっています。
⑤ 修繕やリフィニッシュがしやすい
ギターは長く使うものです。
使っていれば傷もつきます。
そのとき、厚い塗膜を再現することよりも、木材そのものを整えて再び仕上げられる方が合理的です。
オイルフィニッシュは、使い続けることを前提にしたメンテナンスやリフィニッシュとの相性が良い仕上げだと考えています。
環境への負荷をできるだけ減らしたい
私がラッカーやウレタンを積極的に選ばない理由は、製作設備や製作コストだけではありません。
一番大きな理由の一つが、環境への負荷です。
ギターを製作する以上、製作者自身が塗料や溶剤を扱うことになります。
そして完成したギターを使うのは、製作者ではなく購入者です。
さらに、長い年月が経ってギターが役目を終えたときには、その廃棄についても考える必要があります。
もちろん、オイルフィニッシュだから環境への負荷がゼロになるわけではありません。
使用する製品によって成分も異なりますし、乾燥前の取り扱いや廃棄にも注意が必要です。
それでも、木材に浸透・硬化する自然系のオイルを利用し、厚い合成樹脂系の塗膜をできるだけ作らないという考え方には、製作する側、使用する側、そして廃棄まで含めて考えたときに意味があると私は考えています。
ギターを作るところから、使われ、そして役目を終えるところまで。
その全体を考えた結果として、私はオイルフィニッシュを選択しています。
これは「自然塗料だから絶対に安全」という単純な話ではありません。
できるだけ人体や環境への負荷を抑えながら、ギターとして必要な性能を確保する。
そのバランスを考えた上での選択です。
まとめ
オイルフィニッシュは、単に「簡単な塗装」でも「安い塗装」でもありません。
木材を必要以上に覆わず、その表情や質感を活かしながら、製作工程を合理化することができる仕上げ方法です。
製作費を抑えられる。
製作期間を短縮できる。
木材の質感を楽しめる。
修繕やリフィニッシュがしやすい。
そして、製作者、使用者、廃棄まで含めた環境への負荷について考えることができる。
私は、こうした理由からオイルフィニッシュを選択しています。
次回は、実際にギターへオイルフィニッシュを施工する方法について説明します。
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