「練習不要の上達術」とは何か

「練習不要の上達術」は、ただ楽をして上達するといった魔法ではありません。

ギターは、練習に時間を費やすための楽器ではなく、音楽を楽しむための楽器です。その観点から、ギターをもっと自由に楽しみ、挫折する人を減らすために考え出した上達方法。それが「練習不要の上達術」です。

なぜ「練習不要」を唱えるのか?

ギターを始めたものの、練習を続けられずに挫折してしまう人は少なくありません。その原因の一つは、ギターを始めた瞬間から「練習しなければならない」という考え方に縛られてしまうことです。

練習は音楽そのものではありません。ボール一つあれば、サッカーでも野球でも、すぐに遊ぶことができます。ギターも本来、そういうものであっていいはずです。

「まずはフィンガートレーニングをしましょう」「音階練習から始めましょう」そう教える前に、すでに人間に備わっている音感やリズム感、身体感覚など、さまざまな能力を使ってみる。自分自身の感覚を観察し、それをギターに応用する。それによって、無理に練習を積み重ねなくても、まずギターを弾いて音楽を楽しむことができます。

挫折する人をなくす。それが、この考え方の出発点です。

「練習」は本当に不要なのか?

基本的には、不要だと考えています。ただし、どうしても「訓練」が必要になる場合はあります。明確な目的があり、それを確実に達成する必要があるなら、その目的に応じた訓練を行えばいい。これは学業でも、スポーツでも、どんなジャンルでも同じです。

では、それ以外の場合。ただギターを楽しみたい人はどうすればいいのでしょうか?

ギターを楽しむために、最初から大量のコードや音階を覚える必要はありません。まずは5つのコードと、1つのリズム。それだけを知っていれば、あとは自分自身の身体をどう使うかを観察することで、練習を目的にしなくてもギターを楽しむことができます。

一度「ギターを弾くことは楽しい」と知ってしまえば、その後、何かの技術を身につけるために訓練が必要になったとしても、それを楽しみながら続けられるようになります。そのとき、それはもう単なる「練習」ではありません。「もっと上手く演奏する方法を身につけること」に変わっているからです。

「練習不要」の核心

では、「練習不要」を実行するために最も重要なものは何でしょうか。それは、心・技・体の観察です。

心はどうなっているのか。体はどうなっているのか。技術はどうなっているのか。その比較対象は、実は普段の生活の中にあります。

一番簡単な例を挙げてみましょう。立っているとき、私たちは地球の重力を感じているでしょうか? なぜ立っていられるのか。なぜ倒れずにバランスを取ることができるのか。まず、ただ観察してみる。そして歩いてみる。関節や筋肉はどのように動いているのか。身体はどのようにバランスを取っているのか。これも、ただ観察する。

私たちは普段、こうした精密な身体の動きをほとんど意識せずに行っています。だからこそ、それを意識的に観察してみる。すると、ギターを持つこと、弦を押さえること、右手を動かすこと、そのすべてが観察の対象になります。

普段の身体の動きを観察し、それをギターに応用する。これが「練習不要の上達術」の核心です。

「練習不要」の到達点

「練習不要の上達術」によって、ギターを始めた人が挫折することを避けられる。では、その先には何があるのでしょうか。

練習という枷が外れれば、弾きたいときにギターを弾き、自由に音楽を楽しめるようになります。「練習しなければいけない」「もっと練習しないと他人に認めてもらえない」そんな強迫観念や、他人からの評価に縛られる必要もなくなります。

最低限必要な5つのコードと1つのリズム。これを身につけておけば、弾きたいジャンルが変わったとしても、そこから自分なりに音楽を広げていくことができます。

そして、音楽の聴き方も変わってきます。ただ楽しむだけではなく、音楽そのものの深みを感じられるようになる。そうしてギターは、特別な「練習道具」ではなくなっていきます。人生の一部として、ギターが存在する。それが、「練習不要の上達術」が目指す到達点です。

「練習不要」は上級者にも使える

「5つのコードと1つのリズム」。そして、心・技・体の観察。これを身につけることは、初心者だけに意味があるのでしょうか。私はそうは考えていません。

初心者にとっては、ギターをもっと楽に、自由に楽しむための土台になります。そして上級者にとっては、さらに進歩するための強力な土台になります。これは、単純な反復訓練だけで身につけようとするより、大きな時間短縮につながる可能性があります。

憧れのギタリストの演奏を見てみてください。指はスムーズに動いている。ピッキングは正確。身体には余計な力が入っていない。周囲を見渡し、他のプレイヤーの音にも耳を傾けている。

これはすべて訓練によって身につけたものなのでしょうか。半分は正しいでしょう。しかし、もう半分は「観察」によって身についたものではないでしょうか。「もっと上手くなりたい。」「もっといい音を出したい。」「もっといい音楽を演奏したい。」そう求め続けた結果、自分自身の身体や音、周囲の演奏を観察するようになる。それは、誰かに教えられたからではなく、他のプレイヤーや自分自身を観察する必要に迫られ、自然と身につけたものなのかもしれません。

だからこそ、卓越したプレイヤーは、単に演奏技術が高いだけではありません。人を惹きつける音を持っています。

「練習不要の上達術」は、初心者を挫折させないためだけの方法ではありません。ギターを楽しみながら、自分自身の演奏を観察し、より深い音楽へ進んでいく。そのための入り口にもなるのです。


レッスンでは、この考え方を軸に、一人ひとりの身体感覚に向き合っています。

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